【カコムスSEが書く「明日から役立つ」ITコラム】
スモールスタートから始める、社内サーバーの安全なクラウド移行~第3回:Azure Storageとは~
スモールスタートから始める、社内サーバーの安全なクラウド移行
~第3回:Azure Storageとは~
はじめに
そのデータ、本当に安全に守られていますか?
日々の業務で生まれる文書、システムログ、画像、動画、アプリケーションの出力データ。気づけば膨大な量になっているのに、「どこで」「どう管理しているか」を把握しきれていない――そんな企業は少なくありません。
テレワークの普及やシステムのクラウド化が進む今、社内サーバーだけに依存した運用は限界を迎えつつあります。その課題を解決し、安全性と柔軟性を両立する選択肢として注目されているのが、Microsoftのクラウドストレージサービス「Azure Storage」です。
本コラムでは、Azure Storageの主要サービスや活用のポイントをわかりやすく紹介します。
Azure Storageとは
Azure Storageは、Microsoftが提供するPaaSのストレージプラットフォームです。高可用性と耐久性を備え、セキュリティにも優れたデータ保存環境を実現します。オンプレミスの物理的なストレージ機器と比較すると、初期投資が不要で、使用量に応じた従量課金制を採用しているため、コスト効率にも優れています。
Azure Storageの特徴は、あらゆる種類のデータを安全かつ柔軟に保存・管理するために、用途に応じた複数のサービスを選択できる柔軟性です。適切なサービスを選択するために、それぞれのサービスについての概要と特徴をご紹介します。
Azure Storageの主要サービス
Azure Files(ファイルストレージ)
Azure Filesは、クラウド上で利用できるフルマネージドなファイル共有サービスです。SMB(Server Message Block)プロトコルをサポートしており、WindowsやLinux、macOSなど複数のOSからアクセスし、標準的なファイル共有としてマウントできます。
主な特徴
オンプレミス環境で使用していたファイルサーバーと同様の操作感で利用でき、複数のクライアントから同時アクセスが可能です。SMB3.0とHTTPSを利用して保存されているデータや通信を保護しているため、安心して利用できるファイルストレージです。Azure File Syncを使用すれば、オンプレミスのファイルサーバーとクラウド間でデータを同期させることもできます。
※Azure FilesやAzure File Syncについては以下の記事で詳しく解説しております。
【カコムスSEが書く「明日から役立つ」ITコラム】Azure Filesとは~メリットや構成例、PaaS・IaaSの違いについてご紹介~
こんな用途におすすめ
- 既存のファイルサーバーのクラウド移行
- 別拠点や部門間での共有ファイル管理
- アプリケーション設定ファイルの集中管理
- 開発環境とテスト環境でのデータ共有
Blob Storage(ブロブストレージ)
Blob Storageは、テキストファイルや画像、動画など、あらゆる形式の非構造化データを保存できるオブジェクトストレージサービスです。「Blob」とは「Binary Large Object」の略称で、大容量のバイナリデータを効率的に扱うことができます。
主な特徴
Blob Storageでは、データを「コンテナ」と呼ばれる領域に格納します。コンテナ内には複数のBlobを配置でき、階層的なフォルダ構造のように管理することも可能です。アクセス頻度に応じて4つのアクセス層を選択できる点が特徴的です。
- ホット層:頻繁にアクセスされるデータ向け。ストレージコストは高め、アクセスコストが低い。
- クール層:アクセス頻度が低いデータ向け。最低30日間の保存が推奨される。
- コールド層:さらにアクセス頻度が低いデータ向け。最低90日間の保存が推奨される。
- アーカイブ層:180日以上アクセスされない長期保存用。ストレージコストは最も安価だが、データ検索料金が最も高く、データの取り出しに時間がかかる。
こんな用途におすすめ
- Webサイトの画像や動画ファイルの配信
- バックアップデータやログファイルの長期保存
- ビッグデータ分析用のデータレイク構築
- モバイルアプリのコンテンツ配信
Queue Storage(キューストレージ)
Queue Storageは、大量のメッセージを保存し、非同期処理を実現するためのメッセージキューイングサービスです。アプリケーション間の疎結合な通信を可能にし、システムの信頼性と拡張性を向上させます。
主な特徴
1つのキューに最大64KBまでのメッセージを格納でき、数百万件のメッセージを保持できます。メッセージの有効期限(TTL)は既定で7日ですが、API 2017-07-29以降は任意の正の値や-1(無期限)も指定可能です。HTTPSを通じてどこからでもアクセスできます。
こんな用途におすすめ
- Webアプリケーションとバックエンド処理の連携
- バッチ処理のジョブ管理
- マイクロサービス間のメッセージング
- 負荷分散が必要な処理の実装
Table Storage(テーブルストレージ)
Table Storageは、構造化されたNoSQLデータを保存するためのキー・値型のデータストアです。スキーマレスな設計により、柔軟なデータ構造を持つアプリケーションに適しています。
主な特徴
テーブルには「パーティションキー」と「行キー」の組み合わせで一意にデータを識別します。リレーショナルデータベースが提供するような高度な結合処理には対応していませんが、単純なデータアクセス用途においては、高速かつコスト効率に優れたソリューションとして位置付けられます。
こんな用途におすすめ
- ユーザープロファイル情報の保存
- IoTデバイスからのセンサーデータ収集
- アプリケーションログの保存と分析
- 大規模なカタログデータの管理
Disk Storage(ディスクストレージ)
Disk Storageは、Azure仮想マシン専用のブロックレベルのストレージサービスです。「マネージドディスク」とも呼ばれ、仮想マシンのOSディスクやデータディスクとして使用されます。従来のストレージアカウントを介さず、Azureが自動的に管理するため、運用負担が大幅に軽減されます。
ディスクの種類と特徴
Disk Storageは、ワークロードの要件に応じて5つのディスクタイプから選択できます。
- Ultra Disk:最高レベルのパフォーマンスを提供。1ミリ秒未満の超低レイテンシが求められるミッションクリティカルなワークロード向け。容量、IOPS、スループットを個別に調整可能
- Premium SSD v2:Premium SSDより高性能でコスト効率に優れた次世代ディスク。パフォーマンス特性を柔軟に調整でき、変動するワークロードに最適
- Premium SSD:高性能を必要とする本番環境のワークロード向け。一貫した低レイテンシと高IOPSを提供
- Standard SSD:軽度のWebサーバーや開発・テスト環境など、中程度のパフォーマンスが必要なワークロード向け
- Standard HDD:アクセス頻度が低いバックアップやアーカイブ用途に適した、最も経済的な選択肢
Disk Storageのメリット
Disk Storageは、従来の非管理ディスクと比較して多くの利点があります。Azureがストレージアカウントを自動管理するため、ストレージアカウントの上限を気にする必要がありません。また、可用性セットやゾーン配置との統合により、高可用性の構成が容易になります。
データは常に3重複されます。耐久性はLRSで11ナイン、ZRSで12ナイン相当、可用性は設計上99.999%クラスです。さらに、Azure Backup との統合により、ディスク全体のバックアップと復元が簡単に行えます。
こんな用途におすすめ
- 仮想マシンのOSディスクおよびデータディスク
- データベースサーバー(SQL Server、MySQLなど)
- 高性能が求められるアプリケーションサーバー
- 開発・テスト環境
- エンタープライズアプリケーションの永続ストレージ
Azure Storageのメリット
ストレージサービスは、クラウドコンピューティング領域において極めて普及しているソリューションの一つであり、複数の主要クラウドプロバイダーから多様なサービスが提供されています。そんな中、数あるクラウドストレージサービスの中でもMicrosoft Azureを選択することによる利点について、ご紹介します。
1.高い可用性と耐久性
Azure Storageはデータの冗長化方式を利用者の目的に合わせ、以下の4種類から自由に選択をすることができます。
- LRS(ローカル冗長):同一データセンター内で3重複(最も低コスト)
- ZRS(ゾーン冗長):同一リージョン内の異なるデータセンターに同期複製(高可用性)
- GRS(geo冗長):LRS+地理的に離れたセカンダリーリージョンにコピー
- GZRS(geoゾーン冗長):ZRS+地理的に離れたセカンダリーリージョンにコピー
2.Microsoft製品との統合性
Azure Storageはオンプレミス環境とスムーズに連携ができるため、ハイブリッド環境でデータ管理を効率的に行うことができます。
- Active Directoryとの連携:既存のオンプレミスActive Directory環境との統合が容易で、ユーザー認証やアクセス制御を統一的に管理できます。
- Windows環境との相性:SMBプロトコルをネイティブサポートし、Windowsファイルサーバーからの移行をスムーズに進めます。
3.セキュリティ
保存データと転送データの両方を暗号化し、Microsoft Entra IDとの統合によって詳細なアクセス制御が可能です。また、コンプライアンス要件に対応した多数の認証を取得しています。
- きめ細かなアクセス制御とコンプライアンス対応
- 既存のWindowsベースのワークフローとの互換性
- 豊富な管理ツールとモニタリング機能
4.ハイブリッドクラウド環境の構築
Azureの最大の特徴は、オンプレミスとクラウドを橋渡しするハイブリッド環境の構築が得意な点です。Azure File SyncやAzure Stackなどのソリューションにより、既存のオンプレミス環境を活かしながら段階的にクラウド移行を進められます。
サービスの選び方
選択のポイント
適切なストレージサービスを選ぶ際は、以下の観点から検討することをおすすめします。
- データの種類:構造化データか非構造化データか
- アクセス頻度:頻繁にアクセスするか、長期保存するか
- アクセス方法:ファイル共有として使うか、APIでアクセスするか
- パフォーマンス要件:低レイテンシが必要か、スループット重視か
- コスト:予算とストレージ容量のバランス
実践的なヒント
多くのシステムでは、複数のストレージサービスを組み合わせて使用します。例えば、Webアプリケーションでは静的コンテンツをBlob Storageに、アプリケーション設定をAzure Filesに、非同期処理をQueue Storageで管理するといった構成が一般的です。それぞれの特性を理解し、適材適所で活用することが成功の鍵となります。
まとめ
Azure Storageは、さまざまなデータ保存ニーズに対応する包括的なクラウドストレージソリューションです。Blob Storage、Azure Files、Queue Storage、Table Storage、Disk Storageという5つの主要サービスは、それぞれ異なる特性を持ち、用途に応じて使い分けることができます。
特にDisk Storageは仮想マシンの性能を左右する重要な要素であり、Ultra DiskからStandard HDDまで幅広い選択肢が用意されています。ワークロードの要件を正確に把握し、パフォーマンスとコストのバランスを考慮して適切なディスクタイプを選択することが重要です。
クラウドストレージへの移行を検討している企業にとって、Azure Storageは高い信頼性とコスト効率を兼ね備えた有力な選択肢です。まずは小規模なプロジェクトから始めて、各サービスの特性を理解しながら、段階的に活用範囲を広げていくことをおすすめします。
配信日:2025年11月19日
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