業務ごとに異なるシステムを利用する中で、業務情報が分散。データの補正作業や改修コストが大きな負担になっていました。
課題を抜本的に解決すべく、オープンソースERP「iDempiere」(※)を導入。
「情報の一元管理」から「業務標準化」を実現し、「変化に強い」基幹システムを構築。
導入の背景と効果、今後の展望について、事業開発部の宮崎様と久保様にお話を伺いました。
※現在は、 ERPパッケージ「iDempiere」をベースとした業務システム構築ソリューションとして「BeSpice®DecERP」を提供
DecERP導入事例 「情報の一元管理」により「業務標準化」を実現 全社のDX推進を支える「変化に強い」基幹システムを構築
POINT 事例のポイント
- 業務プロセスごとに分散していたシステムを統合し、情報の一元管理を実現
- 現場の要望を柔軟に取り入れ、業務に適合した基幹システムを構築
- 業務の特性や現場の運用に合わせて、細かな権限設定や使いやすい画面設計を実施
課題・ご要望
- 業務プロセスごとに分散したシステムを統合
- データ補正作業や改修コストを削減
- 操作しやすい画面設計を基本としつつ、業務の特性に合わせた複雑な画面設計も必要
導入・効果
- 情報の一元管理により業務効率116%の向上を達成
・システム連携によるデータ加工作業が低減
・各システムからの情報収集作業を削減 - システム統合により開発効率187%の向上を達成
(当初計画の期待値以上の効果)
・システム開発費が低減
・運用・システム検討時間が削減
BeSpice DecERP include iDempiereに関するお問い合わせ
PROFILE お客様情報
- ご担当者様:
- 事業開発部 開発部門 サービス開発担当 課長 宮崎 哲哉様、事業開発部 開発部門 サービス開発担当 久保 千鶴様
NTTスマイルエナジーは、通信・制御技術を用いてエネルギーを持続可能でインタラクティブなものへと変革し、世界中の人々が笑顔で安心して暮らせるより良い社会づくりに貢献しています。
PROBLEM 課題・ご要望
複雑化したシステムを統合し、「データの補正作業」と「改修コスト」を削減
導入に至る経緯を教えていただけますでしょうか。
当社は2011年 にベンチャー企業としてスタートしましたが、業務プロセスごとに順次システムを導入していった結果、システムが複雑化して情報が分散する課題に直面しました。
各システムでデータを管理する仕組みが異なるため、データの整合性を取るために多くの手作業が発生。出荷作業や請求書発行の都度、CSV連携や手動でのデータ取り込みが必要となり、本来専念すべき業務に集中できない状況でした。これに加えて当社特有の事情もあり、会計についても他システムのデータに複雑な補正を加えながら入力していました。
また、システムがバラバラに存在することで、改修コストの負担も大きくなり、特に会計システムは独自にカスタマイズしていたため、マイナーバージョンアップのたびに手を加えることが必須でした。生産管理システムについても新製品をつくるたびに仕組みを変更しなければならないなど、さまざまな課題があり、こうした課題を抜本的に解決するために、基幹システムのリプレースに着手しました。
新しいシステムやベンダーを検討するにあたり、どういった点を重視しましたか?
まず、優れた出力機能を有していること。また、社内で簡単な修正や項目の追加ができることも重要でした。日々のメンテナンスを内製化しつつ、大規模な改修にもそれほど時間をかけずに対応できることを要望しました。
システムの構築方法は、スクラッチではなくパッケージを希望していたものの、完全なパッケージでは自社に合ったものにならないため、ある程度カスタマイズできるものを探していました。
ベンダーの選定に当たっては、画面項目の追加などに対して素早く柔軟に対応してもらえることを重視しました。
検討の結果、「iDempiere」を選んだ理由・決め手は何でしたか?
特に大きかったのは、職責や権限を細かく設定できることです。当社には「販売管理」「生産管理」「物流」「会計」という4つの大きな業務プロセスがあり、このうち生産管理と出荷・配送業務 を別の会社に委託しています。社内だけではなく業務委託先の会社でもシステムを使うため、職責や権限を適切に設定・切り替えしたいと考えていました。これをiDempiereの標準機能で実現できることが非常に魅力的でした。
また、画面の作成や変更が容易であり、かつ、複雑な画面UIにも対応できることもポイントでした。社内や委託先で広く使えるように簡単な操作画面であることを基本にしつつ、複雑な画面作成にもカスタマイズして対応してくれる。その両面を兼ね備えていることも評価しました。
このほか、CRMなど豊富な標準機能があることも導入の後押しとなり、「今後必要になった場合に便利だろう」と、将来の拡張性も考慮してiDempiereの導入を決めました。
EFFECT 導入・効果
現場の要望を取り入れ、ユーザー視点の「使いやすさ」と業務を横断した「全体の効率化」を両立
採用決定後、どのように導入を進めていきましたか?
契約締結後、2019年3月にプロジェクトが始動。当初の計画では全ての機能がそろってからリリースする予定でしたが、2020年に新型コロナウイルスが流行し、電子化を早める必要が生じ、コロナ禍のリモート体制でも顧客対応を円滑に行えるよう、まずは販売管理のみリリースしたいとカコムスさんへ相談。
従来の販売管理システムでは納品書や請求書などの発行を全て印刷で行っていたのに対し、新基幹システムではPDFで出力することができる。これを速やかに実現したいと2020年4月頃 にカコムスさんに伝えたところ、快諾 してくださいました。同年10月に開発が完了し、並行運用期間を経て、11月上旬に本番運用を開始。
その後も状況に応じて計画を見直しながら、協力して開発・導入を進めていきました。
導入の過程において、カコムスの対応はいかがでしたか?
地理的に会社が近いこともあり、対面で対応してもらえる安心感がありました。一度、システム間の連携で不具合が生じたのですが、夕方以降の時間だったにもかかわらず「早く対応した方がいいので今から伺います 」と即応してくださいました。大詰めの段階でも、カコムスさんの担当者に一声かけるとすぐに複数の提案をしてくださって。「カコムスさんなら、何かあっても最短の時間で乗り越えてくれる」と信頼できました。
開発面では、追加変更への迅速な対応が印象的でした。たとえば、販売管理について現場の担当者が「この項目がわかりにくい」と伝えた際には、わずか5分ほどで修正・反映が完了して。「この短時間でそこまで修正ができるのか」と驚きましたね。
また、画面UIの設計開発にも尽力いただきました。従来の販売管理システムでは、受注伝票や売上伝票の入力画面でかなりスピード感のある操作が行われており、クラウド上に構築するシステム で同等のスピードを実現できるかが懸念点でした。iDempiereの標準機能では実現できなかったのですが、カコムスさんが独自にカスタマイズし、優れたUIを設計してくれました。現場での使いやすさを一番に考えてくださって、ありがたかったです。
新しいシステムを導入するにあたり、苦労されたことや工夫されたことはありますか?
特に印象に残っているのは、物流システムの対応ですね。サーバーとIEのサポート終了の時期が重なり、開発期間が限られる中で業務委託先の理解を得る必要があり、説明するために何度も足を運びました。
検証環境を使った担当者向けの説明会には、カコムスさんの担当者も同行。開発がほぼ終わった段階だったのですが、業務委託先から「画面上で入力するのは手間がかかる。もっと効率的にできないのか」という要望が出て……。
私は内心焦ったのですが、カコムスさんの担当者がその場で「Excelに入力したデータを取り込むのはどうですか?」と提案してくださいました。しかも2・3日で実装してくれ柔軟に対応してくださったことに非常に感謝しています。
導入した結果、どのような変化・効果がありましたか?
一番変化が大きかったのは、物流業務です。「システムの使い勝手が良くなった」「工数を削減できた」と現場から高い評価を得ています。たとえば出荷計画を立てる際に、以前はExcelに入力した計画値を一つずつシステムに入力していました。
先ほどお話ししたカコムスさんの提案により、Excelに入力したデータをまとめてシステムに取り込む機能を追加したことで、2時間分の作業を削減。また、カコムスさんが工夫を凝らしてつくった出荷作業画面では、従来は3画面を往復していた商品ID・シリアル番号・送り状番号の紐付け作業を1画面で一括操作できるようになり、効率が大幅に向上しました。
このほかにも各業務プロセスにおいてさまざまな効果があり、会計システムではデータの補正作業が従来の3分の1程度に減少。生産管理では製品構成に応じて入力項目を設定できるようになり、新商品の登録にシステム改修が不要になりました。
各システムが統合されて情報を一元管理できるようになったことで、担当者間の問い合わせも大幅に削減できました。職責・権限に応じたアクセス制限を適切に設定した上で、各自が必要な情報を調べられるようになり、利便性が向上したと実感しています。
FUTURE 今後の展望
全社のDX推進を「変化に強い」基幹システムが支えていく
今後の展望をお聞かせください。
当社は2024年に13期目を迎え、ビジネスや業務を変革している最中にあります。これまで培ってきた遠隔監視の機能をもとに、弊社のコアコンピタンスである通信と制御技術により新しい価値を生み出していく。そのために、更なる業務効率化やDXを推し進めていく方針です。
今回、分散していたシステムを統合して新基幹システムを構築したことで、各業務の標準化が進みました。この結果、既存業務の改善にとどまらず、社内で対応していた受電業務のアウトソーシングや、他のクラウドとの連携による完全電子化も実現できました。
DX推進の動きは今後ますます本格化する予定です。新たな取り組みに対して、システム面も追随していく必要があります。この基幹システムが会社のデジタル変革を支える基盤であり続けられるよう、カコムスさんと連携しながらスピード感を持って対応していきたいと考えています。
最後に、今後カコムスに期待することがあればお聞かせください。
開発・導入の段階では、コロナ禍の影響がありながらも、カコムスさんからの提案や柔軟な対応により円滑に進めることができました。今後の変化に対応できるよう、保守フェーズでも引き続きスピーディな対応を期待しています。これまで以上に当社の業務を深く理解していただき、お互いに提案し合える関係性を築いていけたら嬉しいです。
担当より一言
NTTスマイルエナジー様では市場動向を見据えたサービス提供及び、社会の課題に向けた新規サービスを長期的な観点から様々なビジネス環境の変化に適応するため、新規サービスの提供にも柔軟に対応できる基幹システムを刷新されました。
今後の貴社のDX推進において、データを活用した更なるサービス価値の向上を進められると考えています。弊社として基幹システムの新たな取り組みに順応できるよう引き続き努めてまいりますので、今後ともよろしくお願い申し上げます。