【ITコンサルタントがおくるDX推進コラム-空を仰げば-】
第20回:年末調整デジタル化の効果を試算してみた ~生まれた「ゆとり時間」で何をする?~
第20回:年末調整デジタル化の効果を試算してみた
~生まれた「ゆとり時間」で何をする?~
いつもお世話になっております。IT コンサルティングサービス部の空井(ソライ)と申します。
DX(デジタルトランスフォーメーション)関連の情報をお伝えさせて頂くコーナーです。
今回は 20 回目。皆様のDX推進の気付きになれば幸いです。
年末調整のシーズンが到来しました。
バックオフィス部門の皆さま、年末調整書類の回収・チェックはお済みでしょうか?
デジタルトランスフォーメーション(DX)の流れを受けて、年末調整業務デジタル化の普及率は約50%と言われています。
しかし、「導入で具体的にどれほどの効果が出ているのか?」を明確に把握できている企業はまだ少ないのではないでしょうか。
そこで今回のコラムでは、デジタル化の効果を試算する際のポイントと、DXを成功に導くための「目的設定の重要性」についてお伝えします。
■デジタル化によるコスト削減効果を試算する際のポイント
年末調整業務をデジタル化する際、まずは「従来の紙ベースでの工数 (現状、As-Is)」を計算します。
私の実務経験から、従来の紙ベースによる年末調整業務プロセスにおける1人当たりの工数は、おおむね 1.5時間/人 になります。
年末調整業務プロセス 1人当たり工数 (時間)
・申告書類の印刷・配布(総務担当) 0.25
・申告書類の記入(従業員) 0.50
・申告書類の提出(従業員) 0.25
・記入事項のチェック(総務担当) 0.30
・給与システム入力(総務担当) 0.20
合計 1.50
この 1.5時間/人という工数が、デジタル化によって 3分の1 に削減されると仮定すると、1.0時間/人の工数削減効果が生まれます。
※各業務プロセスごとに削減できる時間を試算すると、より精緻な試算結果が得られます。
※上記業務プロセスには、書類の記入漏れやミスによる差戻し時間を考慮していません。
全従業員の何%が差戻しになるのか、自社の傾向から1人当たり差戻し工数を計算し、加算するとより良いでしょう。
これを企業の従業員数別で見ると、以下の工数削減が見込まれます。
・50人:50時間
・100人:100時間
・200人:200時間
さらに、この削減効果を人件費(労務費)に換算してみましょう。
・削減工数: 1.0時間/人
・人件費(時給換算): 2,000円/人(例)
・削減効果: 2,000円/人
これを企業の従業員数別で見ると、以下のコスト削減が見込まれます。
・50人:100,000円
・100人:200,000円
・200人:400,000円
上記の試算は、あくまで一般的な試算モデルになります。
ツール選定の際は、自社の給与計算システムの入力やチェック体制など、どの業務プロセスに一番時間がかかっているのか(ボトルネック)を洗い出し、
「ツール導入で、そのボトルネックをどれだけ解消できるか」という視点で工数を計測・試算してみることが重要です。
また、「コスト削減効果金額 > ツールの利用料」をツール選定の判断基準の一つとしてください。
■DX成功のカギ ~生まれた「ゆとり時間」の使い道を明確にする~
デジタル化を進める上で、最も重要なのは「目的」の設定です。
紙ベースのアナログな業務プロセスをデジタル化し、工数を削減するという行為は、「目標」であって「目的」ではありません。
デジタル化により削減された時間で「何をするのか?」、「何を実現するのか?」の「目的」を設定してこそ、DXは成功します。
目的例:採用強化施策の検討時間に充てる、従業員満足度向上施策の検討時間に充てる
■おわりに
年末調整のデジタル化を単なる「効率化」で終わらせず、生まれた「ゆとり時間」を「未来への投資時間」と位置づけ、
バックオフィス部門の戦略的な価値向上へとつなげていきましょう。
20年以上前、私は年調業務を担当しており、この季節が大嫌いでした。
タイムマシンがあれば、今の年末調整デジタル化ツールをプレゼントしたいと思う、今日この頃です。
配信日:2025年12月15日
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