【BIコンサルタントが語るコンサルコラム】
第43回:「直観・ひらめき」と「思いつき」

第43回:「直観・ひらめき」と「思いつき」
いつもお世話になっております。IT コンサルティングサービス部の長榮(ナガエ)と申します。
システム構築・IT・業務改善・業務改革に関する情報や、業務において日々感じていることを、
この場をお借りしてお話しさせて頂くコーナーです。今回は 43 回目。
1996・97年に行われた IBM のスーパーコンピュータ「ディープ・ブルー」との対局で有名な、
チェス世界王者ガルリ・カスパロフは「未知の分野で直観がはたらくことはない」と述べています。
(※調べたところ、原文では “Intuition” が使われており、”直感” ではなく “直観” と訳されています。)
「 のんびり座っているうちに知恵が白髪とともにふえていくことは期待できない。
過ちから学ぶことは当然として、それ以上のものを経験に求めるべきである。
より多くを手にするためには、それを要求し、養い、探しにいかなくてはならない。
直観とは、経験、知識、意志のすべてが集まるところである。一般の通念とは異なり、
自分がほとんど知らない分野で直観がはたらくことはないといっていい。
ごくあいまいな予感でさえ、何かしら明確なものが元になっている。
…(中略)…
説明も理解もできないからといって、この強い力が存在しないことにはならない。」
― 出典:『決定力を鍛える チェス世界王者に学ぶ生き方の秘訣』
― ガルリ・カスパロフ(著)、近藤 隆文(翻訳)
「才能の科学」の著者マシュー・サイドも創造性の本質について次のように述べています。
「 ひらめきの瞬間は青天の霹靂ではなく、専門分野に深く没頭したあとに湧きおこった高潮なのだ。」
― 出典:『才能の科学 人と組織の可能性を解放し、飛躍的に成長させる方法』
― マシュー・サイド(著)、山形 浩生(翻訳)、守岡 桜(翻訳)
プロジェクトの現場では、時に専門知識や背景情報の十分な理解がないまま提案がなされることがあります。
たとえ善意であっても、十分な検討や調査に基づいていない「安易な思いつき」や「なんとなくの発想」は、
プロジェクトの方向性に混乱をもたらしかねません。特に意思決定権を持つ立場からの即興的な提案は、
チーム全体に大きな影響を与えることがあります。
その分野の専門家や経験を有する方からの提案ならば有益ですが、十分な背景知識のない思いつきへの対応に
時間と労力を割くことになれば、プロジェクトの効率性が損なわれることになります。
皆様、いかがでしょう?”あるある” ではないでしょうか?私には経験があります。
リーダーの何気ない一言が「正式な方針」だと誤解され、チームが勝手に動き出してお客様から叱責を受けたり、
役員の「例外的に対応してあげてよ」という指示で特例対応をしたところ、現場ではその特別扱いに不満が噴出し、
説明や後処理にかなりの労力を費やしたりしました。土台(背景や根拠)を後付けするって超大変なんですよねぇ…。
カスパロフの指摘する通り、未知の分野で直観は働きません。
だからこそ、自らの専門性を高める継続的な努力(失敗を含めた経験の積み重ね・知識の更新)が必要だと思うのです。
専門性を欠いた思いつきは混乱を招きますが、専門性に裏打ちされた直観は、問題解決への近道となります。
…とはいえ、「アイデアを否定しすぎると組織の活気が失われてしまう」という懸念もあります。
大切なのは、「アイデアをどう扱うか」の仕組みを整えることではないでしょうか?(※第6回コラム参照)
1. 検証の徹底:事前調査・最適解の検討・代替案の模索
… 事前に調べたの?本当に最適なの?他に無いの?
2. 論理の掘下げ:発想の背景や理由を掘り下げる機会の創出
… なぜそう思うの?根拠は何?前提は正しい?
3. 実行前の吟味:思いつきを受け入れつつ、実行前の選別と検証
… いいね!でも実行前にもう少し検討しない?
4. 専門性の蓄積:継続的な学習と実践による知識・経験の蓄積
… 自分の専門性、日々高めてる?
こうした仕組みがあれば、単なる「思いつき」が価値ある「ひらめき」へと昇華される可能性が高まります。
「思いついたこと」をすぐに提案するのではなく、最低限の調査や検証を経てから発言するだけでも、
提案が受け入れられる確率も、実行後の成功率も、格段に変わってくるはずです。
「あっ!いいこと思いついた!」と目を輝かせて無邪気に叫ぶ子どもは可愛いものですが、
そのひらめきを “本当にいいこと” に育てられるかどうかは、専門性と経験のある大人の腕の見せどころなのです。
配信日:2025年5月20日
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