【BIコンサルタントが語るコンサルコラム】
第48回:ゴールという言葉
第48回:ゴールという言葉
いつもお世話になっております。IT コンサルティングサービス部の長榮(ナガエ)と申します。
システム構築・IT・業務改善・業務改革に関する情報や、業務において日々感じていることを、
この場をお借りしてお話しするコーナーです。今回は 48 回目。
イビツィア・オシムは、ボスニア・ヘルツェゴビナのサラエボ出身のサッカー指導者です。
2003年にジェフユナイテッド市原・千葉の監督、2006年に日本代表の監督に就任されています。
「 言葉は極めて重要だ。そして銃器のように危険でもある。私は記者を観察している。
このメディアは正しい質問をしているのか。ジェフを応援しているのか。そうでないのか。
新聞記者は戦争を始めることができる。意図を持てば世の中を危険な方向に導けるのだから。
ユーゴの戦争だってそこから始まった部分がある。」
― 出典:オシムの言葉
― 木村 元彦 (著)
サッカーの話題から入りましたが、ビジネスの現場で「ゴール」と表現されると、多くの方は
「最終到達点」をイメージするはずです。皆で共有されている資料のスケジュールのページ上に、
“旗” のアイコンが立っているのがお決まりです。まさか、網が貼られたサッカーゴール(用品)や
得点後に両手を突き上げて喜ぶ選手のシーンを想像した人はほとんどいないでしょう。
プロジェクトでも「ゴール」を設定するのは当然のこと。他にも「この会議のゴールは何?」とか、
「今週の開発ゴールは○本完了」といった具合に、ゴールを意識する場面は多くあります。
ですが、この「ゴール」という言葉は厄介で、少し注意が必要ではないか、と思うのです。
以前、プロジェクトメンバーに「ココがゴール(終わり)と言ったじゃないですかーっ!!」と、
思いがけず怒られたことがあります。私にとっては単なる “通過点” でしかなかったのですが、
「これで終わり(その後は何もない)」と思っていた彼にはゴールは “到達点” として認識されており、
この認識のズレが思わぬ衝突を生んだのでした。
ある節目を「ゴール」と呼んだ途端、そこで燃え尽きてしまう人を何人も見てきました。まるで、
陸上競技でゴールテープを切った直後、その場に倒れ込んでしまう選手のように。難関登山の登頂後に
息を切らして座り込む登山者のように。達成感と同時に緊張が一気に解けて力尽きてしまう光景は、
誰もが一度は目にしたことがあるはずです。
「燃え尽き症候群(バーンアウト)※」まではいかずとも、大型のシステム導入プロジェクトが無事に
本稼働を迎えた翌週になぜか体調を崩してしまうメンバーや、重要な事業計画プレゼンを成功させた後、
急に気力が湧かなくなったと数日お休みされるお客様…等々。これは決して甘えや弱さではなく、
長期間の緊張と努力が一気に解放されることによる、心身の自然な反応です。
しかし、この虚脱感を放置すると、慢性的な疲労や意欲の低下に繋がりかねません。
(※アメリカの精神心理学者、ハーバート・フロイデンバーガーが1970年代に提唱した概念)
だからこそ、私はゴールを「通過点のひとつ」として意識することを重視しています。上述の例ですと、
大型システムが本稼働を迎えたならば、お客様の本番業務が始まりますし稼働監視も必要でしょう。
成功した重要なプレゼンは、その内容を具現化し、計画を現実化していく必要があるでしょう。
また、プロジェクト達成後の整理や振り返りの時間を意図的に組み込むことも重要なポイントです。
時と場合により、「マイルストーン」や「フェーズ完了」に表現を変更しても良いかもしれません。
あの時、メンバーに怒られたのは、私が「ゴール」という言葉を安易に使い過ぎたせいです。
終わりだと思っていたのに「いや、まだ続きがあるから」なんて後出しされたら、そりゃ怒りますよ。
オシムの「言葉は銃器のように危険」という警告を、身をもって学んだのです。
配信日:2025年10月31日
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