【ITコンサルタントがおくるDX推進コラム-空を仰げば-】
第15回:ITツールは「属人化」解消の「特効薬」となるのか?

第15回:ITツールは「属人化」解消の「特効薬」となるのか?
いつもお世話になっております。IT コンサルティングサービス部の空井(ソライ)と申します。
DX関連の情報をお伝えさせて頂くコーナーです。今回は 15 回目。
皆様のDX推進の気付きになれば幸いです。
バックオフィス部門に関する調査では、常に上位に挙がる課題の一つに「業務の属人化」があります。
この点については、多くのバックオフィス担当者の皆さんも、実感として共感されるのではないでしょうか。
この属人化を解消するために、DXを推進し、ITツールを導入しようと考えている方も多いと思います。
しかし、少し立ち止まって考えてみてください。
ITツールの導入で、本当に「属人化」は解消されるのでしょうか?
確かに、ITツールは業務の標準化や情報共有を促進し、属人化解消に大きく貢献します。
たとえば、ナレッジ共有ツールやチャットボット、ワークフローシステムなどを活用すれば、
誰もが同じ情報にアクセスできるようになり、業務の透明性も高まります。
とはいえ、ITツールを導入するだけで、属人化の根本原因まで解消できるわけではありません。
■属人化の根本的原因とは
属人化が進んでしまう背景には、以下のような根本要因があります。
①業務の標準化や共有体制が不十分
社内で業務のやり方が標準化されていない、あるいは業務内容が十分に共有されていない場合、
知識やノウハウが特定の個人に集中しやすくなります。
②ドキュメントやマニュアルの不足
業務手順やナレッジが文書化されていないため、新しい担当者がすぐに業務を理解できず、
特定の人に依存する状況が続きます。
③業務の複雑性や専門性
業務が複雑で専門性が高い場合、標準化やマニュアル化が難しく、属人化しやすい傾向があります。
④引き継ぎや教育の時間的・人的リソース不足
繁忙や人手不足により、業務を引き継ぐ余裕がなく「自分でやった方が早い」という心理が生まれ、
結果として属人化が進みます。
⑤個人の心理的要因や評価システムの問題
自分の存在価値や立場を守るために、あえて知識やノウハウを共有しないケースもあります。
①、②、③のような要因には、ワークフローや業務可視化ツール、ナレッジ管理ツールなどのIT活用が効果的です。
しかし、④や⑤については、ITツールだけでは解決が難しく、別のアプローチも必要になります。
■属人化の根本原因を解消するために
属人化を本質的に解消するためには、ITツールの導入だけでなく以下のような組織文化や仕組みづくりが求められます。
1.組織文化の変革
●オープンで透明性のあるコミュニケーション文化
情報やナレッジが社内で自由に共有され、誰もがアクセスできる環境が不可欠です。
これにより、特定の個人に依存せず、全員が同じ情報を活用できるようになります。
●チームワークと共同作業を重視する風土
業務を個人の責任ではなくチーム全体のものと捉え、協力し合う姿勢を醸成します。
共同作業や知識共有が自然と行われるようになれば、属人化は抑えられます。
●フィードバックと共創の文化
メンバー同士が自由に意見や改善案を出し合い、互いに学び合う環境を作ります。
これにより、業務の最適化やナレッジの継承が促進されます。
●失敗を恐れず挑戦できる文化
失敗を責めず、むしろ学びや改善の機会と捉えることで、新しいアイデアや変化を受け入れやすくなります。
2.仕組みの整備
●業務の標準化とマニュアル化
業務内容を明確にし、誰が担当しても同じ品質で遂行できるよう標準化・マニュアル化を進めます。
これにより、属人化を防ぎ、引き継ぎも容易になります。
●ナレッジマネジメントの導入
暗黙知を形式知化し、ナレッジ共有ツールや研修制度を通じて組織全体で共有・継承できる仕組みを作ります。
●定期的な業務の棚卸し・可視化
業務フローや責任範囲を定期的に見直し、可視化することで、属人化の兆候を早期に発見しやすくなります。
●役割・責任の明確化と分散
一人に業務が集中しないよう、役割や責任を明確に定義し、必要に応じて分散させます。
●評価制度の見直し
ナレッジ共有やチーム協働を評価する仕組みを取り入れ、個人の独占ではなく、共有や協力が評価されるようにします。
ITツールは属人化解消の強力な味方ですが、それ自体が「特効薬」ではありません。
属人化を根本から解消するには、オープンなコミュニケーションやチームワークを重視する文化と、
業務の標準化・ナレッジ共有・役割分散・IT活用・評価制度見直しといった仕組みが必要です。
お薬(= ITツール)は用法・用量(= 文化・仕組み)を守って正しく使わなければ、本来の効果を発揮しないということなのです。
配信日:2025年7月1日
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