【カコムスSEが書く「明日から役立つ」ITコラム】
スモールスタートから始める、社内サーバーの安全なクラウド移行~第2回:「Azure Backup」で始める、安心・簡単なクラウド移行の第一歩~

スモールスタートから始める、社内サーバーの安全なクラウド移行
~第2回:「Azure Backup」で始める、安心・簡単なクラウド移行の第一歩~

はじめに:ハイブリッドクラウドという考え方

突然ですが、「ハイブリッド」という言葉の語源をご存知でしょうか。
実は、ラテン語で“豚とイノシシから生まれた子孫”を意味する「hybrida(ヒュブリダ)」をルーツとしており、元々は生物学の分野で用いられていました。
現在広く使われる英語の「hybrid(ハイブリッド)」は、17世紀の初頭頃から使われるようになった比較的新しい言葉で、1997年12月にトヨタが世界初の量産ハイブリッド乗用車 プリウス を発売したことが転換点となり、“異なる要素を組み合わせることで、それぞれの良いところ取りをする”という意味で、様々な分野で広く認知されるようになりました。

ITの世界でも、既存の社内環境(オンプレミス)とクラウドを連携させる「ハイブリッドクラウド」など、効率化や柔軟性を追求する上で重要な概念として浸透しています。
今回は、Microsoft Azureが提供する「Azure Backup」を活用し、低リスク・低コストで実現できるハイブリッドクラウドの始め方についてご紹介します。ぜひ、IT戦略のヒントとしてご一読ください。

なぜ、バックアップからクラウドを始めるのか?

「全社システムを一気にクラウドへ移行する」という計画は、必要な工数や費用、業務への影響を考えると、現実的ではないケースが少なくありません。
もちろん、すべてをクラウド化するフルクラウド環境は理想的な側面もありますが、多くの企業にとっては、「まずはバックアップだけクラウドへ」といった段階的なアプローチが有効です。リスクを分散しながら徐々にオンプレミス環境の役割を縮小し、最終的にフルクラウドへ移行する、という現実的なロードマップを描くことができます。

では、その第一歩として、なぜバックアップのクラウド化が推奨されるのでしょうか。

そもそもバックアップとは、システム障害や人為的ミス、サイバー攻撃といった万一の事態に備え、データやシステムの状態を複製し、安全な場所へ保管しておくことです。トラブル発生時に、バックアップ時点の状態へ迅速に復旧し、事業継続を可能にすることを目的としています。

この「安全な場所への保管」において、クラウドを利用するメリットは絶大です。

  • 優れた災害対策(DR)
    クラウドのデータセンターは地理的に離れた複数の拠点で冗長化されており、堅牢な免震構造や電源対策が施されています。これにより、地震や水害といった物理的な災害からデータを守ることができます。
  • 強固なサイバー攻撃対策
    (Azureの場合)バックアップデータは転送中・保管中ともに自動で暗号化されます。これにより、ランサムウェアのような悪意ある攻撃によるデータの改ざんや破壊を防ぎ、安全な復元を可能にします。
  • クラウドへの「足慣らし」
    バックアップ運用を通じて、クラウドの管理ポータルや独特の操作感に少しずつ慣れることができるため、将来的な本格移行に向けた経験ともなります。

Azure Backupが選ばれる理由

クラウドバックアップを検討する際、多くの企業が懸念するのが「コスト」と「運用負荷」です。「専用の高価な機材やソフトウェアが必要なのでは?」「設定が複雑で専門知識が要るのでは?」といった不安を払拭するのが、Microsoftが提供するシンプルかつ信頼性の高いバックアップサービス「Azure Backup」です。

Azure Backupを利用するメリットは様々なものがありますが、実際に私共がお客様にご提案する中で、特に評価の高いAzure Backupの主な特長を4点ご紹介します。

1.多層的なセキュリティ

通信はすべてHTTPSとTLS 1.2以上の強力なプロトコルで保護され、Azureに保存されたバックアップデータは自動的に暗号化されます。さらに、役割ベースのアクセス制御(RBAC)が可能な「Recovery Services コンテナー」を利用することで、承認された担当者以外はバックアップデータにアクセスできず、不正な操作や削除を厳格に防ぎます。

2.シンプルな管理・運用

バックアップの状況はすべてAzureポータルから一元的に監視・管理でき、レポート作成も可能です。ファイルの誤削除やサーバー障害が発生した際も、ファイル単位やアプリケーション単位で迅速に復元できます。また、誤ってバックアップ設定を削除してしまっても、「論理的な削除 (Soft Delete)」機能によりデータは14日間保持されるため、安心して運用を続けられます。

3.予測しやすいコスト体系

料金は、バックアップ対象のインスタンス(サーバーなど)と、バックアップデータを保存するストレージ容量に基づく従量課金制です。特に大きな特長として、バックアップ時(インバウンド)およびリストア時(アウトバウンド)のデータ転送料が無料です。これにより、万が一オンプレミスサーバーへ大量のデータを復元する事態になっても、予期せぬ高額な転送料が発生する心配がありません。

導入前に具体的な費用を知りたい場合は、公式サイトの「Azure料金計算ツール」で詳細な見積もりが可能です。
Azure料金計算ツール(Microsoft公式サイト) ≫

4.幅広いバックアップ対象

Azure上の仮想マシン(VM)やAzure Filesはもちろん、社内のWindows/Linuxサーバー、VMware/Hyper-Vといった仮想環境、さらにはSQL ServerやSharePointなどのアプリケーションまで、多様な環境のバックアップに対応しています。
オンプレミスのWindowsサーバーをバックアップする際は、Microsoftが提供する「Microsoft Azure Recovery Services (MARS) エージェント」をインストールするだけで、簡単かつ安全にクラウドへのバックアップを設定できます。

※Microsoft Azure Recovery Services (MARS) エージェントとは?

オンプレミスのWindowsマシン(サーバーやクライアント)にインストールする軽量なソフトウェアです。 ファイルやフォルダ、システムの状態をAzure上のRecovery Servicesコンテナーへ安全にバックアップする役割を担います。

Azure Backup 導入事例

ここでは、Azure Backupを活用して課題を解決した企業の事例を2つご紹介します。

事例1:国内の中堅製造業

背景・課題:全国4拠点に点在するファイルサーバーのバックアップを外付けHDDやテープで行っていたが、運用負荷が増大。過去にランサムウェア感染によるデータ復旧トラブルも経験。
導入内容:各拠点のWindows ServerにMARSエージェントを導入し、バックアップデータをAzure東日本リージョンへ集約。
導入効果:
・バックアップ運用が自動化され、管理工数が大幅に削減。
・テープの管理・運搬コストが不要となり、年間約40万円のコスト削減を達成。
・ランサムウェア感染時にも、Azure上の安全なデータから迅速にリストアできるように。

事例2:グローバル展開している小売企業

背景・課題:世界中の拠点に200台以上のWindows Serverが散在し、データ保護の運用が標準化されておらず、ガバナンスの欠如が問題に。
導入内容:Azure BackupとAzure Monitorを組み合わせ、グローバルでの統合監視体制を構築。Azure Policyを用いて、全サーバーへのバックアップ設定適用を強制・自動化。
導入効果:
・企業全体でバックアップ関連の作業工数を月間約80時間削減
・拠点ごとのバックアップ漏れや設定の不備がなくなり、コンプライアンスを遵守。
・Microsoft 365やAzure VMのバックアップもAzureに統合し、ITガバナンスを大幅に強化。

その他の導入事例は、Microsoft公式サイトで多数公開されています。
Microsoft公式 お客様導入事例:Backup ≫

まとめ:スモールスタートで築く、未来へのクラウド基盤

「Azure Backup」は、コストとリスクを抑えながら、オンプレミスとクラウドの“いいとこ取り”を実現するハイブリッドクラウドの第一歩として、最適なサービスです。

本コラムを通じて、「クラウドにデータを預ける」というハードルが、実は思ったよりも低いことをご実感いただけたのではないでしょうか。

次回は、Azure Storageサービスについてお届けいたします。
皆さまのクラウド活用が、安心・安全かつスムーズに進む一助となれば幸いです。

【次回予告】

スモールスタートから始める、社内サーバーの安全なクラウド移行
~第3回:Azure Storage とは?~

配信日:2025年9月26日

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