【BIコンサルタントが語るコンサルコラム】
第58回:「整理して」を整理してみる

第58回:「整理して」を整理してみる

いつもお世話になっております。IT コンサルティングサービス部の長榮(ナガエ)と申します。
システム構築・IT・業務改善・業務改革に関する情報や、業務において日々感じていることを、
この場をお借りしてお話しさせて頂くコーナーです。今回は 58 回目。

社会人になりたての頃に一番戸惑ったのは、プログラミングの難しさではなく、「調整」という言葉の広さでした。
「調整しといて」が口癖の先輩がおりまして、当初はスケジュールを合わせることくらいに考えていましたが、 「お客様と調整しといて」は、事情を聞きながら納得できる妥協点(落としどころ)を探ることを要求されていたり、 「社内の調整しといて」は、限られた予算や人員の配分を全体のバランスを見ながら最適化する仕事だったり、 「チーム内で調整しといて」は、メンバー間の意見や不満を聞いて、仕事が進む状態をつくることだったりするのです。
同じ「調整」なのに、時と場合によってやらなければならないこと、求められていることが違いました。

ドラッカーは、コミュニケーションについて、
①知覚であり、②期待であり、③要求であり、④情報ではない、
と述べています。その中の「③要求」について、次のように書いています。

「③コミュニケーションは要求である
…(中略)…
コミュニケーションは受け手に何かを要求する。
受け手が何かになること、何かをすること、何かを信じることを要求する。」
― 出典:マネジメント[エッセンシャル版] – 基本と原則
― ピーター・F・ドラッカー (著)、上田 惇生 (翻訳)

現場でお客様から何度も言われてきた「整理して」という要求も、今でも私を悩ませるものの一つです。

「これ整理しといて」と大量の資料を渡されたり、「明日までに整理して出して」と会議の締めに言われたり、 「一回、整理しよか」と言われ、必死に走っているのに一旦立ち止まらされる感覚を味わったり、様々です。

一見シンプルに聞こえるのですが、この「整理」には、多くの場合「うまく言葉にできない状態」が隠れていて、 「あ、来たな…」と身構える瞬間でもあります。依頼したご本人も、うまく言語化できていない場合があります。
ただ、「このままでは駄目だ。状況を整える必要がありそうだ。」という感覚だけはあるようなのです。
何を求めているのか分からないのに、整理してほしいと言われるのですから、なかなか厄介な依頼なのです。

「整理して」と言われたときは、単純に資料を綺麗に並べることが目的とは限りません。
事実と推察が混ざっているのかもしれないし、いくつかの問題を一つの問題として扱っているのかもしれません。
そもそも、最初に置いた前提が間違っているのかもしれない。そういうものを一つずつ確認して紐解いていきます。

「整理して」の依頼に対して、私が考えることは、次のような内容です。

  • 議論が進まなくなったのは、どこからで、なぜだろうか?
  • 事実と推察(仮説)は、しっかり分けられているだろうか?
  • この状況に、周囲は付いてきているのだろうか?
  • この状況で、誰に何を求められているのだろうか?
  • もう一度前に進めるには、何が必要なのだろうか?
  • そもそも、何を「整理できた状態」とするのだろうか?


これらの間を行ったり来たりしながら、ぐるぐる巡り、時にはまだ見えていない可能性まで含めて想像しながら、 「あーでもない、こーでもない」と考えていると、少しずつ関係性が見えてきて、話がつながっていく感覚があります。
傍から見れば「ノリでやっている」ように映るかもしれませんが、何もないところから湧いて出ているわけではなく、 実態はもう少し込み入っています。武道の「形(型)」のような体系化された動作や決まった手順はなく、 あるとすれば、経験の中で勝手に身についた癖のようなものかもしれません。自分では当たり前にやっているけれど、 どうやって身についたのかと言われると困ってしまう類のものです。

残念ながら、「こうやれば整理できる」という決まった方法はありません。
ただ、「この人は何に困っているのか?」「何を求めているのか?」と考え続けるだけです。
「調整しといて」も「整理しといて」も、この点でよく似ています。

偉そうに書きましたが、実際の現場で「調整しといて」「整理しといて」と言われるとやっぱり気が重いものです。
「ちゃんと分かっているのか?分かったつもりになっていないか?」って…。

配信日:2026年9月25日

長榮 智和 / Tomokazu Nagae
ITストラテジスト / プロジェクトマネージャ / システムアーキテクト / PMP

2002年新卒入社。大手電機メーカー様の業務に長年従事。要件定義から開発/導入/運用/再構築と各フェーズを経験。 後半の10年程は、SCM・PSI領域の見える化(BI)業務にて PM・IT企画構想担当。中国(蘇州)・インドネシア(ジャカルタ)への海外出張も経験。 現在は、BI・IT コンサルタントとして、業務整理・業務改善・データ可視化などに携わっている。

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