【ITコンサルタントがおくるDX推進コラム-空を仰げば-】
第11回:DX始めるなら、情報資産の棚卸から始めませんか?
				
   第11回:DX始めるなら、情報資産の棚卸から始めませんか?
       いつもお世話になっております。IT コンサルティングサービス部の空井(ソライ)と申します。
       DX関連の情報をお伝えさせて頂くコーナーです。今回は 11 回目。
       皆様のDX推進の気付きになれば幸いです。
       
       棚卸といえば、小売店の商品棚に陳列している商品の数と帳簿に記載されている数に差異がないか、
       定期的に確認する業務ですが、この棚卸を情報資産に対しても実施しましょうというお話です。
       
       ●情報資産とは?
       IT企業以外の方にはあまり馴染みがないと思われますが、ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)における情報資産の定義は、
       組織が保有する情報およびその情報を保持するための媒体やシステムを指します。
       具体的には、次のようなものが含まれます。
       
       1.デジタルデータ:顧客情報、財務データ、技術情報、電子メールなど。
       2.紙媒体:契約書、名刺、手書きのメモなど。
       3.ハードウェア:PC、サーバー、USBメモリ、スマートフォンなどの情報記憶媒体。
       4.ソフトウェア:OS、アプリケーション、データベースなど。
       5.ネットワーク:インターネット接続、社内LAN、Wi-Fiネットワークなど。
       6.施設:データセンター、オフィス、倉庫など情報が保管されている場所。
       7.人:情報を取り扱う従業員や外部委託先など。
       
       ISMSの定義では範囲が広いので、ここでは「1.デジタルデータ」と「2.紙媒体」を情報資産としてお話を続けます。
       
       ●情報資産の棚卸とは?
       情報資産の棚卸とは、企業が保有するすべての情報資産をリストアップし、その現状を把握・管理することです。
       具体的には、次のような手順で実施します。
       
       
- 情報資産の特定:企業が保有するすべての情報資産をリストアップします。
 - 情報資産の分類:情報資産を種類や重要度、機密性などの基準で分類します。
 - 情報資産の評価:各情報資産の価値やリスクを評価し、適切な管理方法を決定します。
 - 情報資産の記録:情報資産の詳細(所有者、保管場所、アクセス権限など)を記録し、管理台帳を作成します。
 - 定期的な見直し:情報資産の棚卸は一度行うだけでなく、定期的に見直しを行い、最新の状態を維持します。
 
       
       商品在庫の棚卸とよく似た手順ですが、「分類」と「評価」が情報資産の棚卸のポイントとなります。
       なぜなら、これらの分類が情報セキュリティ基準の判断材料になるからです。
       
       ●情報資産の棚卸をしないとどうなる?
       商品在庫の棚卸をしない場合、以下のようなリスクが高まるため、皆さん当然のように棚卸を実施しています。
       
       
- 正確性の欠如:在庫数が把握できなければ正確な損益計算ができないので、正確な利益がわからなくなります。
 - 経営判断の誤り:正確な利益がわからなければ、経営判断を誤る可能性があります。
 - 資金繰りの悪化:在庫が売れて利益が出る前に仕入れた費用を支払うが、資金が足りず黒字倒産する可能性があります。
 
       
       一方、情報資産の棚卸を実施している企業は少ないのではないでしょうか?
       情報資産は、決算書に直接影響が無いため棚卸の必要性がないと思うかもしれませんが、本当にそうでしょうか?
       
       実は、情報資産の棚卸をしなかった場合も、次のようなデメリットがあります。
       
       
- 意思決定の質の低下:正確な情報が不足すると、経営判断が感覚や経験に頼ることになり、客観的で合理的な意思決定が難しくなります。
 - 業務効率の低下:データの不備や不正確なデータが原因で、業務プロセスが混乱し、効率が低下します。
 - 財務的なリスク:不正確なデータは、財務報告や予算策定に影響を与え、企業の財務状態を正確に把握できなくなります。
 - 管理コストの増加:不要なライセンスやストレージの支払いが継続し、IT費用の無駄が発生します。また、重複した情報システムの導入や維持により、余分なコストが積み重なる可能性があります。
 - セキュリティリスク:重要な情報資産の把握が不十分となり、適切な保護対策を講じられない恐れがあります。結果として、情報漏洩や不正アクセスのリスクが高まります。
 - コンプライアンスリスク:法令や規制で求められる情報の管理状況が不明確となり、監査への対応が困難になります。また、個人情報保護法などの法令違反のリスクが高まります。
 
       
       ●情報資産の棚卸をしませんか?
       「情報資産の棚卸をしないことのデメリットはわかったが、やらなくても特に問題になっていないから、勘と経験と度胸でこれからも乗り切る」
       というお考えであれば、情報資産の棚卸を無理におすすめいたしません。
       
       しかし先行きが不透明な時代を乗り切るためには、正確なデータ(数値・情報)に基づく経営判断は不可欠と考えます。
       情報資産は、人的資本と同じくバランスシート(貸借対照表)には載らない資産ですが、経営にとって大切な資産です。
       まずは、情報資産の棚卸=現状把握から始めませんか?
       
       配信日:2025年2月21日
       
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