【ITコンサルタントがおくるDX推進コラム-空を仰げば-】
第18回 古参市民開発者の反省文

第18回:古参市民開発者の反省文

いつもお世話になっております。IT コンサルティングサービス部の空井(ソライ)と申します。
DX(デジタルトランスフォーメーション)関連の情報をお伝えさせて頂くコーナーです。
今回は 18 回目。皆様のDX推進の気付きになれば幸いです。


DXの推進が進むにつれ、「市民開発」という言葉も耳にする機会が増えてきました。
市民開発とは、IT部門に頼ることなく、非IT部門の担当者がローコードやノーコードツールを用いて自ら業務をデジタル化していく取り組みを示します。
この取り組みは、多くのメリットがありますが、デメリットもあります。

●メリット
開発スピードが早い
業務ユーザーの声が反映されやすい
自ら問題解決に取組む等のより良い企業文化が醸成される

●デメリット
属人化・ブラックボックス化
現場が独自に開発・導入したシステムで基幹システム等でデータ連携できない
現場が独自に開発・導入したシステムのセキュリティ対策が不十分

■古参市民開発者の失敗
実は、私も25年前に市民開発をしていました。
当時の私は総務部で社宅管理を担当していました。
社宅管理では、入居期間・期限管理、賃貸物件の契約管理(契約書、契約期限、賃借料振込、支払調書発行等)、 社宅使用料管理(入居区分別使用料計算、使用料の給与控除、年1回の使用料改定)等複雑な業務があり、全て紙で管理していました。
紙での管理は大変面倒で、計算ミスのリスクもあって何とかしなければと思い、Excelで改善・効率化を図りました。
それにより、ある程度業務が楽になりましたが、Excelではレポート発行機能に限界を感じていました。
そんな時、Microsoft Access(データベース管理ソフト)に出会いました。

私は、Microsoft Accessで社宅管理システムを作ってみることにしました。
業務内容や業務プロセスはすべて頭の中にあり、社宅使用料計算等のロジックも社内規程に記載されていましたので、社宅管理システムを単独で完成させることができました。
業務を担当している自分が仕様を考えて作ったので、とても使いやすいシステムになり、作業工数も大幅に削減でき、成功を収めることができました。

…と言いたいところですが、これこそが市民開発のデメリットである「属人化・ブラックボックス化」の典型例です。
私は、いわゆる「野良アプリ」、「シャドーIT」を作ってしまったのです。
お恥ずかしい限りです。

この社宅管理システムは2年ほど利用し、私の異動により別の担当者に引継がれました。
利用マニュアルは作成しましたが、「仕様書」や「設計書」はありません。
その後しばらくは利用されていたと思われますが、制度変更等が発生した際にメンテナンスができたかどうか定かではありません。

■失敗から学ぶ
今の時代、ローコードやノーコードで開発できるツールを使えば、Accessよりも高度なアプリケーションを簡単に作ることができるようになりました。
だからこそ、市民開発者の皆さんにお伝えしたいことがあります。

業務アプリを作るだけでなく、必ず「仕様書」や「設計書」を作るようにしてください。
特に、データベースに格納されるデータの構造や、それらのデータ間の関係性を視覚的に表現するER図(エンティティ・リレーションシップ図)は、 開発者だけでなく業務担当者にデータの流れが伝わるため、整備することをお勧めします。

また、会社として市民開発のルール・作法を定めることも重要です。
開発した業務アプリを属人化させず、継続的に改善しながら利用するために必要なことです。

■おわりに
あなたの業務は、いつか誰かに引き継がれるもので、ずっとあなたが担当するものではありません。 せっかく作った便利な業務アプリは、多くの人に継続的に利用してもらうことにこそ価値があります。
「仕様書」、「設計書」というバトンをしっかり渡せるよう準備してください。

25年前の私のように、継続利用できない「野良アプリ」を作らないことを願います。


配信日:2025年10月6日

空井 達也 / Tatsuya Sorai
応用情報技術者

大手電機メーカーのグループ子会社にて、人事・総務・経理・法務などの管理部門業務に約20年間従事。 給与計算・社会保険の実務を経験し、管理部門業務のプロセス改善やシステム化による改善を実施。 2015年にカコムス株式会社へ入社し、経営管理部の責任者として管理部門全般を統括。 その後品質保証室にてマネジメントシステム (ISMS、PMSなど) の運用改善を推進し、2019年より IT コンサルティング案件に従事。

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